癌治療情報センター 治療方法 癌の三大療法

治療方法

手術による治療法の効果とリスク

■メリット

手術による治療法の効果(メリット)としては、がんが他の臓器や組織への転移がない初期の段階であれば、手術はたいへん効果的な治療方法とされています。

■リスク(デメリット)

手術前の画像診断の精度の高まりや、医師の手術技術の進歩によって、手術のリスクは年々減少しているといわれています。

ただし、内視鏡器具による鏡視下手術の中には、手術中の視野が限られ、熟練した医師の技術が必要になるものもあり、一般的な開腹手術に比べてリスクを伴うこともあります。

放射線治療の効果とリスク

■効果(メリット)

がん細胞は、自ら細胞分裂を繰り返してどんどん増殖していきます。放射線はがん細胞の遺伝子(DNA)に直接働きかけ、細胞分裂を止めたり、がん細胞が自殺する(アポトーシス)現象を後押しして、がん細胞を殺します。

ただし、放射線によってダメージを受けても死なずに生き残ったがん細胞が、しばらく経ってから大きくなってくるという場合もあります。

■リスク(副作用)

食欲不振

放射線治療では、治療後に疲れる、食欲がなくなるといった全身的な症状が現われることがあります。

貧血、白血球減少、血小板減少

血液をつくる骨髄がある骨盤や胸骨などに広範囲に放射線が当たると骨髄の機能が落ちるために、赤血球、白血球、血小板などが減り、そのために貧血などを起こすことがあります。

皮膚の変化

放射線を照射した場所の皮膚の色が赤くなったり、シミにように色素沈着を起こしたり、乾燥したりといった変化が現われることがあります。

その他、放射線治療を行った身体の場所によって、さまざまな副作用が現われることがあります。

頭部:頭痛、めまい、脱毛、頭皮が赤くなる、吐き気、嘔吐など

口腔、頸部:ものが飲み込みにくい、飲み込むときにのどが痛い、声がかれる、口が渇く、味覚が変わるなど

肺、縦隔:ものが飲み込みにくい、飲み込むときにのどが痛いなど

乳房、胸壁:ものが飲み込みにくい、のみこむときにのどが痛い、咳、発熱、息切れなど

胃、腸:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢

膀胱:排尿困難、頻尿など

抗がん剤治療の効果とリスク

■効果(メリット)

現在のところ抗がん剤は、白血病などの特定のがんには効果を発揮することが確認されていますが、それ以外のがんに対しては、がん細胞の活動を抑える作用しか期待できまないのが現状です。いまのところ抗がん剤治療では完全にがん細胞を死滅させることはできず、病気の進行を遅らせたり、症状を緩和したりするために用いられています。

・抗がん剤で治癒が期待できるがん

抗がん剤はすべてのがんに効くとは限りません。急性白血病、悪性リンパ腫、精巣(睾丸)腫瘍などのがんには、治すことが期待できる抗がん剤があります。

抗がん剤で進行を遅らせることが期待できるがん

完全に治すことは期待できなくても、乳がん、卵巣がん、骨髄腫、小細胞肺がん、慢性骨髄性白血病、低悪性度リンパ節などは、進行を遅らせることが期待できる抗がん剤があります。

抗がん剤で症状が和らぐなどの効果が期待できるがん

前立腺がん、甲状腺がん、骨肉腫、頭頸部がん、子宮がん、肺がん、大腸がん、胃がん、胆道がんなどについては、何%かで症状が和らぐなどの効果が期待できる抗がん剤があります。

抗がん剤の効果がほとんど期待できないがん

脳腫瘍、黒色腫、腎がん、すい臓がん、肝臓がんなどは、効果が期待できる抗がん剤はまだありません。

■リスク(副作用)

正常な細胞を傷つけることなく、がん細胞だけを狙い撃ちして死滅させるような機能的な抗がん剤は、現在のところほとんどありません。がん細胞だけを狙い撃ちする分子標的薬も正常細胞を傷つけることがまったくないわけではありません。

そのため、抗がん剤治療によって正常な細胞が傷つくことで、副作用が現われることがあります。

抗がん剤の主な副作用としては、吐き気、嘔吐、発熱、肺炎(白血球減少による免疫力の低下)、貧血や消化管からの出血(赤血球減少による)、指先や足先のしびれなどがあります。

●手術による治療法とは

手術による治療法は、がんの三大療法の中で最も古くから行われてきました。

がんの病巣を直接切除するため、がんが他の臓器や組織に転移していない初期の段階では、三大療法の中で最も効果的な治療法ともいわれています。

ただし、たとえ初期のがんであっても、切除が難しい場所にがんがあったり、切除すると必要な臓器の機能が失われてしまったりするような場合は、手術以外の治療法が選択されることがあります。がんの種類や進行度など、場合によっては外科療法だけでなく、放射線治療や抗がん剤治療を並行して行われることもあります。

手術による治療法は、がんを切除する範囲によって「標準手術」「拡大手術」「縮小手術」と大きく分けることができます。

標準手術

がんの切除を一定範囲にとどめる手術

拡大手術

がんの周囲の組織や臓器も含めて、広範囲に切除する手術

縮小手術

がんを切除する範囲をできるだけ最小限にとどめる手術

 

また、手術の方法としては、身体をメスで切って行う一般的な手術に加えて、内視鏡器具を使用した「鏡視下手術」も行われています。鏡視下手術は、例えば腹部のがんの場合は開腹をせず、お腹に開けた数箇所の穴から内視鏡器具を差込み、がん病巣を切除するという方法です。

●放射線療法とは

放射線療法は、外科療法と同じように、がんの病巣だけを狙い撃ちして治療する「局所療法」です。体力がなく外科手術が受けられない場合や、がんが進行していたり、難しい場所にあるために手術が難しいといった場合に、放射線治療が選択されることがあります。

放射線治療は、外科手術と違って臓器を切り取ったり、摘出したりせずにすむため、臓器を温存することができます。

放射線治療はいくつかの目的に応じて行われます。

根治治療

最も多く行われているのは、放射線を当ててがんを殺す「根治照射」です。抗がん剤治療と並行して行われることもあります。

術前、術後治療

手術中にがん細胞が散らばる恐れがある場合に手術前に放射線を当てて、がん細胞をできるだけ殺しておいたり、がんを小さくして手術しやすくしたりするために用いられることがあります。

手術後の再発に対する治療

手術をした部位のがんが他の臓器から再発した場合、食道がん、肺がん、頭頸部がん、乳がんなどの場合は、遠隔転移(最初のがんより遠い臓器や組織への転移)がなければ放射線での治療を行うことがあります。抗がん剤を併用することもあります。

全身照射

白血病などが原因で骨髄移植手術を行う際に、白血病などの再発を減らす目的や、移植される骨髄が拒絶反応を起こさず、うまく生着させる目的で全身に放射線を当てることがあります。

術中照射

手術中に、がん組織を直接確認して放射線を当てることがあります。よりがん細胞を狙い撃ちできるため、腸管などの放射線に弱い組織への影響を少なくして治療することができます。すい臓がんや直腸がんでも行われることがあります。

放射線治療の歴史は100年以上にもおよびますが、技術の進歩によって、周囲の正常な組織にはできるだけ影響を与えずに、がん組織に多くの放射線を集中的に当てることができるようになってきています。

例えば最近では、がん病巣だけを狙い撃ちする「ピンポイント照射」、コンピュータを使いがん病巣の形に合わせて照射する「IMRT(強度変調放射線治療)」、病巣をさらに限局して照射できる「粒子線治療」などがあります。

放射線治療が標準治療として用いられている主ながん>

頭頸部のがん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、悪性リンパ腫、食道がん、脳腫瘍(成人・小児)については、放射線治療が標準治療として用いられています。ただし、他のがんや状態でも放射線治療が用いられることがあります。

●抗がん剤治療とは

薬物を使ってがん細胞を攻撃する治療方法を化学療法といいます。抗がん剤治療は化学療法の一つで、その他に「ホルモン剤」などによる治療法もあります。

抗がん剤による治療は、化学療法の中でも代表的な全身療法です。血液を通じて全身に薬剤を行き届かせ、転移したがんや目にみえないミクロ単位のがんを攻撃します。

発生した場所にだけがんがとどまっている早期のときには、手術や放射線の局所療法が効果的ですが、全身に広がっている場合やその恐れがある場合には、抗がん剤治療が適しているといわれています。

多くのがんは早期発見が遅れると次第に全身に広がり、全身的な病気になることから、手術や放射線治療と合わせて、抗がん剤治療が用いられることも多くあります。

ホルモン剤による治療は、乳がんや前立腺がんなど、ホルモンが関連しているがんに効果が期待できます。

<抗がん剤>

抗がん剤は100種類近くありますが、一般的に抗がん剤と呼ばれるのは、がん細胞を殺す能力を持つ「細胞障害性抗がん剤」が中心です。全身に作用してがん細胞を攻撃しますが、正常な細胞も傷つけてしまうというデメリットがあります。そのため、吐き気や脱毛などの副作用が起こることがあります。

この課題をクリアするために、近年は、がん細胞のみを標的として効率よく攻撃することを目指す「分子標的治療薬」が登場し、白血病、乳がん、肺がんなどで有効な治療法して用いられています。

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