癌治療情報センター 治療方法 手術による治療法

治療方法

●ロボット手術(ダヴィンチ)とは

外科手術には身体をメスで切り開く一般的な開腹手術のほか、お腹に数ヶ所の小さな穴を開け、その穴から内視鏡や電気メスを入れて手術をする腹腔鏡下手術があります。ロボット手術は、「ダヴィンチ」という手術支援ロボットを使って腹腔鏡下手術を行うもので、これまでの腹腔鏡下手術をさらに進化させたがん手術といえます。

ロボット手術は、従来の腹腔鏡下手術と同じように腹部に数ヶ所の小さな穴を開けて治療を行います。従来の腹腔鏡下手術とロボット手術(ダヴィンチ)との違いは、一つは開腹手術と同じように、医師が自分の手で手術をしているかのような精密な操作がロボットの腕を使った遠隔操作で行えることがあります。

しかも、従来の腹腔鏡下手術は平面的な二次元の画像で体内を見ながら手術をしていたのに対し、ロボット手術では立体的な三次元の画像で体内を見ることができるうえに、ロボット手術の画像のほうが人間の肉眼で見るよりも鮮明であるため、一般的な開腹手術や従来の腹腔鏡下手術より、より安全で確実な手術が行えるようになっているといわれています。

また、従来の腹腔鏡下手術は、進行がんに対しては完全に治せるかどうかが不確かであることから用いられないケースがありましたが、ロボット手術はそうした難しい手術に対しても手術治療に挑むために開発されたものです。

ロボット手術の効果(メリット)>

傷口が小さく、患者の身体への負担が少ない

ロボット手術では、腹部に数ヶ所の穴を開けて行います。一般的な開腹手術より切開する傷口が小さくてすむため、患者の身体への負担が少なく、手術後の体力の回復も早いといわれています。

難易度の高いがん手術にも活用

食道がんや前立腺がん(前立腺全摘出術)のような技術的に難易度の高い手術では、より安全性と確実性が増しているとみられ、すい臓がんのようなこれまで開腹手術が一般的だったがんにも、傷口が小さくてすむロボット手術を行うケースが出始めています。

<ロボット手術のリスク>

ロボット手術は日本に導入されてまだ日が浅く、健康保険が適用されない「臨床研究」段階の外科療法です。そのため、治療費は基本的に自費となり、またロボット手術を行える医療機関もまだそれほど多くありません。

●EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは

がんの検査の際に体内を目で確かめるために、口や鼻、肛門から小型カメラを入れて体内をみる「内視鏡」による検査を行うことがあります。内視鏡は検査をするだけでなく、良性のポリープやまだ早期の小さながん腫を切除する機能も備えているため、がんの検査で異常ながん腫やポリープを発見した場合には、そのまま切除まで行うことができます。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)は、2cm以下の消化管の早期がんで多く行われている内視鏡切除術です。例えば2cm以下の大腸がんやその前段階の病変の場合、大腸の粘膜の下層に生理食塩水を注入して病変を盛り上げ、ループ状の器具をひっかけて切除し、回収します。この一連の治療を内視鏡によって行います。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)もEMRと同じ内視鏡切除術ですが、EMRと異なるのは、これまで内視鏡では治療できなかった、2cmを超える大きさの平坦ながんも内視鏡で切除できることです。

例えば大腸の粘膜にある、盛り上がっていないがん病変に対して、粘膜の下層に生理食塩水を注入して病変を盛り上げ、ITナイフという器具でがんを切り開き、はがし取ります。早期がんについては完治が期待できる治療法ですが、リンパ節の切除は行えないため、リンパ節転移がみられる場合には適応外となります。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のメリット>

患者の身体への負担が少ない

EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)ともに内視鏡によってがん組織や病変を切除するため、一般的な開腹手術と比べて患者の身体への負担が少なく、また病巣が完全に取り除けたかどうかを内視鏡で確認することができます。2cm以下の早期がんなら日帰り手術が可能な場合もあります。

保険適用の治療法

EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)ともに健康保険が適用されます。ただし、ESDについては大腸がんに対しては健康保険適用外で、先進医療として認められています。先進医療の場合、治療にかかる費用は自費ですが、検査等の費用は健康保険が適用されます。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のリスク>

EMR(内視鏡的粘膜切除術)とESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を比べると、ESDのほうが対応できる範囲が広く、メリットがあるといえます。しかしESDのほうが熟練した医師の技術を求められるため、それに伴うリスクを生じることがあります。

ESDでは出血や穿孔の恐れ

ESDではEMRより大きく患部を切除するため、出血や腸壁、胃壁などに穴を開けてしまう恐れがあります。胃よりも壁が薄い腸のほうが高い技術が求められるといわれています。

●PDT(低出力レーザー治療)とは

PDT(低出力レーザー治療)は内視鏡治療の一つで、主に肺がんの治療に使われているレーザー治療です。

肺がんは、両方の肺の中心にある太い気管支にできる「中心型肺がん」と、そこから枝分かれする細い気管支や肺胞にできる「末梢型肺がん」とあります。PDTは太い気管支にできる中心型肺がんで、なおかつ早期がん(直径1cm以内、がんが粘膜下層にとどまっている状態)に向いている治療法です。

PDTでは、まず、がんに集まる性質を持ち、光をあてると化学変化を起こす物質を体内に注射します。次にがんの周囲に低出力レーザーをあて、光化学反応によって発生する活性酸素によってがん細胞を破壊するという治療法です。

肺がんほどの実績はまだないものの、表在性食道がん(がんが粘膜下層まででとどまっている状態)、表在性早期胃がん、子宮頸部初期がん(前がん状態の異形成も含む)についても、健康保険が適用されています。

PDT(低出力レーザー治療)のメリット>

患者の身体への負担が少ない

PDT(低出力レーザー治療)は、内視鏡によって治療ができ、胸をメスで切り開いたり、肺を切除しないため、患者の身体への負担が少なくてすみます。また、正常な細胞にはレーザーによるダメージがほとんどないといわれています。

外科手術ができない場合にも向いている

口から内視鏡(気管支鏡)を入れてレーザーを照射し、治療を行うため、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などで肺の機能が落ちている人や、心臓病、糖尿病などで外科手術に耐えられない人にも行うことができます。

<PDT(低出力レーザー治療)のリスク>

PDTは、がん細胞にだけレーザーを照射する治療法ですが、そのために正常細胞と区別してがん細胞だけを目立たせることができる物質(腫瘍親和性光感受性物質)を体内に注射します。その物質によって、日光にあたるとじんましんなどができる光線過敏症というアレルギー症状が副作用として現われることがあります。

現在、腫瘍親和性光感受性物質で健康保険が適用されているものは「フォトフリン」と「レザフィリン」の2種類あり、レザフィリンのほうががん細胞により集まりやすく、深い病巣にも効果があるといわれています。またレザフィリンのほうがフォトフリンに比べると光線過敏症を起こしにくいといわれています。

●胸腔鏡下手術とは

胸腔鏡下手術は、主に肺がんで行われている手術療法です。胸腔鏡下手術は胸に小さな穴を開け、その穴の中に内視鏡や電気メスを入れ、ビデオのモニターを見ながら行う手術で、技術としては腹腔鏡下手術と同じです。

従来の肺がん手術は胸を切り開いたり、肋骨の一部を切除したりするため、患者の身体へのダメージが少なからずありました。胸腔鏡下手術は1990年代初めから行われていますが、当初はまだ難易度が高く、主に早期がんで行われていました。

約20年を経て、胸腔鏡下手術は手術機器などの性能が格段に進歩し、以前は難しかったリンパ節切除も行えるようになっています。健康保険も適用されており、2007年時点で胸腔鏡下手術は肺がん手術の約46%を占めているといわれています。肺がんでは身体に負担の少ない手術が多く行われるようになっています。

<胸腔鏡下手術のメリット>

患者の身体に負担の少ない手術

胸腔鏡下手術は、一般的な開胸手術のように胸を切り開いたり、肋骨を切除したりすることなくがんの病巣を切除することができます。患者の身体への負担が少なく、手術機器や技術の進歩によって、筋肉や神経もほとんど傷つけることなく行えるようになっているといわれています。

<胸腔鏡下手術のリスク>

胸腔鏡下手術は手術機器などの進歩によって、以前に比べてリスクは少なくなっているものの、医師の熟練度による差がまったくないとはいえません。

癌の三大療法
  • 抗がん剤治療
  • 手術による治療
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