●陽子線治療、重粒子線治療とは
2011年05月13日
陽子線治療、重粒子線治療はいずれもがん放射線療法の一種で、がん細胞に放射線をあて、がん細胞の増殖を止め、死滅させる治療法です。両方をまとめて「粒子線治療」と呼ばれることもありますが、陽子線は「粒子線」、重粒子線は「炭素線」とそれぞれ違う種類の放射線を使って治療を行います。
いずれも現在のところ健康保険は適用されておらず、先進医療に認定されています。対象となるがんは固形がんであまり進行していないこと、リンパ節への転移がなく、病巣が一箇所にとどまっていることが条件となります。また、以前同じ場所に放射線治療を受けている場合には行うことができません。
陽子線治療
陽子線は、エックス線よりもエネルギーが高く、身体の中に入るとある一定の深さまではエネルギーをほとんど出さずに進み、止まる直前に最大のエネルギーを出し、停止するという性質があります。
陽子線治療ではその性質を利用し、がん細胞のある場所で最大のエネルギーが放出されるように照射するポイントを調整することで、正常細胞への影響を最小限にとどめながら、がん細胞に効果的に放射線を照射することができます。
重粒子線治療
重粒子線治療は、炭素を電気によってイオン化させた「炭素イオン線」という放射線を使っています。性質は陽子線と同じように、身体の中に入るとある一定の深さまではエネルギーをほとんど出さずに進み、止まる直前に最大のエネルギーを出し、停止するという性質があります。
ただし、陽子線に比べて重粒子線のほうがエネルギーが強く、集中的にがん細胞を攻撃することができるうえ、がんの破壊力も大きいといわれています。そのため、陽子線治療よりも放射線を照射する回数が少なくてすみます。
<陽子線治療、重粒子線治療の効果(メリット)>
患者の身体への負担が少ない
陽子線治療、重粒子線治療ともに、身体にメスを入れることなく、臓器も切除せずに温存できるため、患者の身体への負担が少なくてすみます。
高齢者や手術が難しいケースにも適応
外科手術が難しい場所にがんができている場合や、心臓などの持病がある高齢者のように体力が落ちている場合にも治療を受けることができます。
<陽子線治療、重粒子線治療の副作用(デメリット)>
一般的な放射線に比べて副作用や後遺症はほとんどないといわれています。中には治療後に放射線をあてた部分が痛んだり、皮膚がひきつれることがあります。また、皮膚に近い場所では皮膚炎が起こることがあり、肺がんの場合は胸膜が癒着するなどの副作用が現われることがあるといわれています。